ゲーム開発と AI:データで見る2026年の現在地
開発者の3人に1人が生成 AI を使う一方、業界の過半数は悪影響を感じている。Steam では1万本以上が AI 使用を開示し、その9割超は売上1万ドル未満。調査データから、AI をどう使えば売れるゲームにつながるのかを考えます。
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AI はゲーム開発の道具として急速に広がっています。ただ、使う人が増えることと、 それで売れるゲームが作れることは別の話です。公開されている調査データを並べて、 どこで AI が使われていて、売れている作品はどう使っているのかを整理します。
使っている人は3人に1人。ただし職種で大きく違う
ゲーム開発者会議 GDC が毎年行っている業界調査(2026年、回答者2,300人超)では、 生成 AI を使っていると答えたのは36%でした。ところが、所属によって差が大きく、 ゲームスタジオでは30%、パブリッシャーやマーケティング・広報などでは58%です。 作る現場より、売る・支える側のほうが使っているという構図です。
- パブリッシャー・マーケティング・支援 58%
- 業界全体 36%
- ゲームスタジオ 30%
使いみちは、調べものやアイデア出しが81%と突出しています。 メールなどの日常業務とコードの補助がそれぞれ47%、試作が35%で続きます。 ゲームの中身そのものより、その周辺の作業で使われていることが分かります。
- 調べもの・アイデア出し 81%
- メールなどの日常業務 47%
- コードの補助 47%
- 試作(プロトタイプ) 35%
業界の見方は、2年で急速に悪化している
同じ GDC の調査で、生成 AI が業界に悪影響を与えていると答えた人は、 2024年の18%から、2025年に30%、2026年には52%と、2年で約3倍になりました。 良い影響と答えた人は、13%から7%に減っています。 特に否定的なのは、ビジュアル・テクニカルアート(64%)、ゲームデザイン・シナリオ(63%)、 プログラミング(59%)と、AI に仕事を置き換えられうる職種です。
- 2024年 18%
- 2025年 30%
- 2026年 52%
一方で、Google Cloud の調査(2025年、開発者615人)では90%が「すでにワークフローに取り入れている」、 Unity の2025年の報告では96%のスタジオが「一部の作業で AI を使っている」と答えています。 GDC の36%と大きく違うのは、聞き方と対象の違いです。 「一部の作業で少しでも使っているか」を会社単位で聞けば数字は高くなり、 「あなた自身が使っているか」を個人に聞けば低くなります。 調査の数字を引用するときは、誰に何を聞いたものかを確かめる必要があります。
Steam では1万本以上が AI 使用を開示している
Steam では2024年から、生成 AI を使ったゲームはストアページでの開示が義務になっています。 Totally Human Media の Ichiro Lambe 氏の集計では、開示しているゲームは 2024年4月の約1,000本から、2025年7月に7,818本、11月には10,258本(Steam 全体の8%)に増えました。 2025年に発売されたゲームに限ると、約5本に1本が AI を使っています。
- 2024年4月 約1,000本
- 2025年7月 7,818本
- 2025年11月 10,258本
開示した作品の93%は、売上1万ドルに届いていない
同じ集計で、AI 使用を開示した10,258本の推定売上を見ると、 1,000万ドル以上は12本、100万ドル以上は33本。 一方で9,556本、つまり93%は1万ドルに届いていません。
- 1,000万ドル以上 12本
- 100万〜1,000万ドル 33本
- 10万〜100万ドル 170本
- 1万〜10万ドル 487本
- 1万ドル未満 9,556本
Steam 全体でも売上は大きく偏っているので、この数字だけで「AI を使うと売れない」とは言えません。 ただ少なくとも、AI を使うこと自体は売れる理由にならないことははっきりしています。
売れている作品は、AI を「どこに」使っているか
では、100万ドル以上を売り上げた作品は、AI を何に使っていたのか。 開示内容を分類すると、ゲーム内のアートが49%、音声やセリフが27%、 企画段階のコンセプト作りが13%、マーケティング素材が11%、翻訳が9%でした。 実行中に AI が内容を作り出す仕組みは5%未満です。
- ゲーム内のアート 49%
- 音声・セリフ 27%
- 企画・コンセプト 13%
- マーケティング素材 11%
- 翻訳・ローカライズ 9%
開示の文面では、多くの開発者が「一部の小さな素材」「全体の1%未満」のように、 使った範囲が限られていることを強調しています。 理由として多く挙げられているのは、予算の制約と、試作を速く回すことでした。
2026年1月、開示のルールが明確になった
Valve は2026年1月に開示の書式を改め、開発の効率化に使う AI ツール(コード補助など)は開示の対象外、 プレイヤーが触れるコンテンツとマーケティング素材に使った場合は開示が必要と明確にしました。 開示は「事前に作った素材」と「プレイ中に生成する内容」の2種類に分かれます。
開発者にとっての意味
データから言えるのは次の3点です。
- AI は差別化にならない。開示作品の9割超は売上1万ドル未満。使うかどうかより、何を作るかで勝負は決まっています。
- 売れている作品は、周辺の作業に絞って使っている。アートや音声、翻訳のような量が必要な部分を補い、ゲームの核は人が作っています。
- 開示の書き方も戦略の一部。業界の過半数が否定的に見ている今、何に・どれだけ使ったかを具体的に書くことが、不要な反発を避けることにつながります。
このサイト自体も、AI と一緒に作っています。何に使って、何を人がやったのかは、 別の記事で具体的に記録していく予定です。
出典
- GDC 2026 State of the Game Industry(回答者2,300人超)
- Totally Human Media:AI 開示作品の推定売上は6.6億ドル(2025年11月)
- Google Cloud:ゲーム開発者の90%がワークフローで AI を使用(2025年8月、615人)
- Unity Gaming Report 2025
- PC Gamer:Steam が AI 開示の書式を更新(2026年1月)